心電図を瞬時に読む方法
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ここでは、山下武志 先生著『3秒で心電図を読む本』のポイント自分なりの解釈でまとめています。
心電図が苦手な自分にとっては、とても分かりやすく、かつ心電図初学者にとっては非常にとっつきやすい内容になっていると思います。なぜ以下のような見方で良いのかについては、この本に詳しく書かれていますので、是非参考にしてみてください。自分はこの本のお陰で心電図アレルギーが無くなりました。是非オススメです↓

心電図を読む流れ

【手順1】Ⅱ誘導で正常同調律を確認する 

 P波、QRS波、T波が明確に出ている

 P波が陽性

 HRが 60 (50) -100 (回/min) 

上記の3つが揃えば正常同調律と言える。

【補足】

ー 正常同調律ではない場合 ー

P波の異常、P-QRS関係の異常、QRSの異常(異常Q波、QRS幅)、R波の異常、ST変化、T波の異常、QT延長、U波の異常など、各波の変化に着目する。HRについては、正常値60(50) - 100(回/分)で頻脈か徐脈かを判定し、

  • 100 - 250 (回/分) → 頻拍
  • 250 - 350 (回/分) → 粗動
  • 350 -        (回/分) → 細動
  • 一拍余計に出る  → 期外収縮

上室性 or 心室性 ×   頻拍 or 粗動 or 細動 or 期外収縮 = 8通りが考えられる。上記以外は徐脈であり、

  • P波が出ていない場合  → 洞不全症候群
  • P波は存在しているが、QRSが消失している場合  

    PQ時間が徐々に延長 → 第2度房室ブロック ウェンケバッハ型

    PQ時間が一定    → 第2度房室ブロック モービッツ型

となる。

【手順2】QRS波を確認→Ⅰ・Ⅱ誘導、胸部誘導

  ①QRS幅の確認 (幅が3mm未満なら正常、もしくは問題があれば上室性、3mm以上なら心室性)

  ②異常Q波の確認 (幅が1mm以下なら正常、1mm以上なら異常)

 この2点を確認して胸部誘導を見る。

  ③胸部誘導V1〜V5まで増加、V6で減少 を確認

  ④V5のR波 振幅25mm以下であることを確認

【①QRS幅の確認】

【補足】

QRS幅が

 3mm未満なら正常、もしくは問題があれば上室性(心房性)

 3mm以上なら心室性

QRS波は心室の興奮を表すので、QRS幅が3mm以上であれば、心室に異常があると言える。

②異常Q波の確認

【補足】

異常Q波がⅠ誘導にみられたら→aVLでも異常Q波を確認する。(左側壁梗塞を疑う)

異常Q波がⅡ・Ⅲ誘導にみられたら→aVFでも異常Q波を確認する。(下壁梗塞を疑う)

③胸部誘導V1〜V5まで増加、V6で減少 を確認

【補足】

R波が上記以外の急激な変化を起こしているとき、中隔か前壁に電気的興奮が生じていない、と考える。

④V5のR波 振幅25mm以内であることを確認

【補足】

25mm以上ある場合は、V5のST低下や陰性T波がないか確認する。

V5が25mm以上あるからと言って、必ずしも左室肥大とは限らないので、所見としては

『High Voltage』もしくは、『High Voltage with ST-T cahnge』

と記載する。

 ST-T変化を伴う場合の後者は、心臓のトラブルが生じており、結果的に左室肥大も生じているだろう、、的な考えで『High Voltage with ST-T cahnge』と書く。

【手順3】ST変化、T波の異常→全12誘導で!

 健康診断、経過観察中の患者のような無症状患者において、【手順1・2】で問題がなければ、この【手順3】は不要。何らかの胸部症状がある場合において、ST変化所見は有用であり、無症状患者におけるST変化はあまり意味がない。

健康診断に来る患者さんで、無症状なのにSTが上昇している場合もあることに注意。

ST変化を見つけることは、虚血性心疾患を見逃さないことである。狭心症から心筋梗塞への変化は、検知できない微小な梗塞を含めると、連続的な変化によるものであり、現在では急性冠症候群と呼ばれている。

ー 以下胸部症状がある場合 ー   

 ①まずST上昇を見つける。ST上昇とST低下が混在する場合、ST低下は鏡像的変化である。

 ②ST変化とT波の異常は、全誘導において、どんな小さなものでも所見となるなるので隈無く見る!

 ③急性冠症候群を見逃さないためには、ST変化、T波の異常がなくても、『症状と検査値』も勘案し総合的に判断する!

【補足】

ー ①に関して ー

急性冠症候群の患者の中で、ST上昇を示すものは約30%しかないことに注意!

100人の急性冠症候群患者のうち、約70人はST上昇がみられない。

J Am Cardiol 2000; 36: 2056 5)

正常心電図所見を呈する、急性冠症候群が存在することに注意!

CCUに転送された患者の心電図と最終診断に関する解析 

CCUに運ばれた患者のうち、正常心電図を示すが、最終的に急性冠症候群と診断された患者は10%

Am J Cardiol 1987; 60: 766 6)  

経時的に心電図を記録することによる、急性冠症候群の診断率変化は 約50% → 83%!

最終的に急性心筋梗塞と診断された患者のうち、初診時に診断がついたものは約50%であり、経過を追っていくことで診断が83%まで上昇した。結果、どれだけ追っていても17%は見落としている。

Br Med J 1976; 2: 449 7)

 ー ②に関して ー

例えば、胸部症状がある患者さんで、ほんの少しでもⅡ・Ⅲ・aVF 誘導にST上昇がみられたら陽性所見となりうる。しかし、胸部症状があり、ST変化、T波の異常がみられず、数時間してから急性冠症候群が発症し、心電図で所見が見られる場合もある。

ー ③に関して ー

急性冠症候群の1-4%が大丈夫と診断され、帰宅させられているとの報告あり。

Semin Vasc Med 2003; 3: 363 8)

心電図だけから、虚血性心疾患を鑑別することは、非常に危険であり、必ず症状と検査値をみて総合的に判断するしかない!

参考:急性冠症候群 ガイドライン2018年 改訂版 日本循環器学会

https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2018_kimura.pdf

【まとめ】

【手順1】Ⅱ誘導で正常同調律を確認する。

【手順2】Ⅰ・Ⅱ誘導、胸部誘導でQRS波を確認する。

ー 以下胸部症状がある場合 ー 

【手順3】全ての誘導でST変化、T波の異常を(どんな小さなものでも) 確認する。

ただし、急性冠症候群は心電図に所見がみられないこともあるので、症状と検査値で総合的に判断する。

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