【医療統計】感度・特異度 (問題編)
この記事では(定義編)で扱った知識について、医学部学士編入試験や医師国家試験等で、実際に出題された問題を題材にして、演習を行います。ここで扱う問題を全て理解すれば、この分野でほぼ満点を取れるように作りました。是非、試験直前期に確認してみてください。
問題1 感度・特異度・尤度比 etcの計算
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
検査陽性 |
90 |
20 |
110 |
検査陰性 |
10 |
380 |
390 |
合計 |
100 |
400 |
500 |
上記の検査結果から、(1)感度、(2)特異度、(3)偽陽性率、(4)偽陰性率、(5)陽性的中率、(6)陰性的中率、(7)検査前確率、(8)検査後確率、(9)尤度比、(10)検査前オッズ、(11)検査後オッズを求めよ。
(創作問題)
【解答】
(1)\(感度 = \frac{90}{100} = 0.90\)、(2)\(特異度=\frac{380}{400} = 0.95\)
(3)\(偽陽性率=\frac{20}{400} = 0.050\)、(4)\(偽陰性率=\frac{10}{100} = 0.10\)
(5)\(陽性的中率=\frac{90}{110} = 0.818...=0.82\)、(6)\(陰性的中率=\frac{380}{390} = 0.974...=0.97\)
(7)\(検査前確率=有病率=\frac{100}{500} = 0.20\)、(8)\(検査後確率= 陽性的中率=\frac{90}{110} = 0.82\)
(9)\(尤度比=\frac{感度}{偽陽性率} =\frac{0.90}{0.050} =18\)
(10)\(検査前オッズ=\frac{100}{400} = 0.25\)、(11)\(検査後オッズ=\frac{90}{20} = 4.5\)
補足)
(感度) = 1- (偽陰性率) カンイン
(特異度) = 1- (偽陽性率) トクヨウ
(検査前確率) = (有病率)
(検査後確率) = (陽性的中率)
(検査後オッズ) = (検査前オッズ)×(尤度比)
であることに注意し、計算間違いがないかチェックするようにしましょう。
定義を忘れてしまった場合はこちらの記事を参考にしてください。(6分で復習できます)
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【医療統計】感度・特異度 (定義編)
2019.2.3
この記事では、医学部学士編入試験でしばしば出題される、感度と特異度、そして尤度比周辺の知識についてまとめています。他にも、偽陽性率、偽陰性率、ROC曲線、検査前確率(有病率)、検査...
">【医療統計】感度・特異度 (定義編)
2019.2.3
この記事では、医学部学士編入試験でしばしば出題される、感度と特異度、そして尤度比周辺の知識についてまとめています。他にも、偽陽性率、偽陰性率、ROC曲線、検査前確率(有病率)、検査...
(1)感度とは何か説明せよ。
(2)特異度とは何か説明せよ。
【解答】
(1)感度:疾患ありの人で、検査陽性となる人の割合
(2)特異度:疾患なしの人で、検査陰性となる人の割合
検査前確率50%、陽性尤度比3の検査が陽性となった。検査後確率はいくらか?(医師国家試験 改題)
【解答】
検査前確率(有病率)が50%なので、a、bを用いて以下のように表を埋めることができます。
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
検査陽性 |
a |
b |
a+b |
検査陰性 |
|
|
|
合計 |
① |
① |
② |
検査前確率50%であるから、疾患あり:疾患なし=①:① と書ける。
また、尤度比3であるから、尤度比=(感度)/(偽陽性率)=(a/①)/(b/①)=a/b=3 となる。
ここで、検査後確率=a/(a+b)=1/4=0.25
となる。
検査前確率が20%の疾患において、感度90% 、特異度95%の検査を行い、検査結果は陽性と出た。検査後確率はいくらか?(医師国家試験 改題)
【解答】
検査前確率(有病率)が20%なので、以下のように表を埋めることができます。
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
検査陽性 |
18(感度から計算) |
|
|
検査陰性 |
|
76(特異度から計算) |
|
合計 |
20 |
80 |
100 |
感度90%であるから、20×0.9=18
特異度95%であるから、80×0.95=76 である。
ここで、検査結果が陽性となったので、検査陽性の行で検査後確率を考えて、
検査後確率=18/(18+4)=18/22=0.8181...=0.82
検査前確率が40%の疾患において、感度60%、特異度90%の検査を行い、検査結果は陰性と出た。検査後確率はいくらか?(医師国家試験 改題)
【解答】
検査前確率(有病率)が40%なので、以下のように表を埋めることができます。
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
検査陽性 |
24(感度から計算) |
|
|
検査陰性 |
|
54(特異度から計算) |
|
合計 |
40 |
60 |
100 |
感度60%であるから、40×0.6=24
特異度90%であるから、60×0.90=54 である。
ここで、検査結果が陰性(問題4では陽性であったことに注意!)となったので、検査陰性の行で検査後確率を考えて、
検査後確率=16/(16+54)=16/70=0.228...=0.23 (<0.40)
補足1)これは検査前確率40%以下なので、検査後に陰性と出た場合は疾患ありの確率が下がる。
補足2)仮に、検査結果が陽性と出た場合は、問題4と同じ状況になるので、計算をしてみると
検査後確率=24/(24+6)=24/30=0.80 (>0.40) となる。
ある疾患の検査で陽性と出た。検査後オッズが25%であった。この検査は感度80% 、特異度95%であるとき、有病率はいくらであったか?(創作問題)
【解答】
検査後オッズが25%であったので、以下のように表を埋めることができます。
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
検査陽性 |
20 |
80 |
|
検査陰性 |
|
|
|
合計 |
25 |
1600 |
1625 |
感度80%であるから、20/0.8=25
特異度95%であることから、偽陽性率は5%であるので、80/0.05=1600 である。
よって、有病率=25/1625=0.0153... → 1.5%
補足1)何度も言いますが、(検査後オッズ) = (検査前オッズ)×(尤度比) で計算間違いがないかをチェックしましょう。(20/80)=(25/1600)×(80感度/5偽陽性率) であり、確かに正しい。
ある疾患Aを発見する目的で2000人を検査したところ、陽性が300人、陰性が1700人であった。その後の確定診断で、陽性の中の80%、陰性の中の5%が疾患Aであることがわかった。疾患Aの人のうち、検査で陽性と言われた人の割合(感度)はいくらか?(滋賀医科大学 改題)
【解答】
陽性的中率と陰性的中率が与えられているバターンで、以下のように表を埋めることができます。
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
検査陽性 |
240 |
|
300 |
検査陰性 |
85 |
|
1700 |
合計 |
325 |
|
2000 |
よって、感度=240/325=0.738...=0.74
ROC曲線について正しい記述を全て選びなさい。
(1)ROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic curve)は、受信者動作特性曲線のことであり、起源はレーダーシステムの通信工学理論として開発されたものであり、レーダー信号のノイズの中から敵機の存在を検出するための方法として開発された方法である。
(2)ROC曲線のタテ軸は感度、横軸は偽陰性度である。
(3)カットオフ値を変化させ、感度を下げると、特異度も下がる。
(4)感度が高く、特異度が高い検査が良い検査である。
(5)特異度は疾患なしの場合に、陰性と出る割合である。
(6)感度が高い検査は確定診断に有用である。
(7)特異度が高い検査は除外診断に有用である。
(医師国家試験 改題)
【解答】(1)、(4)、(5)
(1)はそうらしいですので、略語とともに頭の片隅に。参考)大阪大学腎臓内科HP(http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/clinicaljournalclub6.html)
(2)(3)(4)ROC曲線の縦軸は感度、横軸は偽陽性率(1-特異度)です。このROC曲線の接線の傾きは尤度比であるので覚えやすいです。また、感度を下げると、特異度は上がります。感度が高くて、特異度が高い(偽陽性が高くない)検査が良い検査です。特異度は疾患なしの場合に、陰性と出る割合です。
(5)感度と特異度の定義はしっかりと覚えておきましょう。
(6)感度が高い検査で陰性になる場合は、除外診断として有用です。
(7)特異度が高い検査で陽性になる場合は、確定診断として有用です。
感度、特異度、尤度比について正しい記述を全て選びなさい。
(1)感度が高い検査で陰性のとき、除外診断として有用である。
(2)特異度が高い検査で陽性のとき、確定診断として有用である。
(3)陽性尤度比は(感度)/(1-特異度)で定義される。
(4)陰性尤度比は(1-感度)/(特異度)で定義される。
(5)除外診断には偽陰性率の低い検査が有用である。
(6)確定診断には偽陽性率の低い検査が有用である。
(7)尤度比はROC曲線の接線の傾きで定義される。
(8)尤度比は10以上で臨床的に有用な検査、5以下で有用ではない検査とされる。
(創作問題)
【解答】(1)〜(8) 全て正しい
(1)(5) (感度) = 1- (偽陰性率)であり、感度が高い検査とは、偽陰性率が低い検査です。ただし、偽陽性は含んでいるかも。
(2)(6) (特異度) = 1- (偽陽性率)であり、特異度が高い検査とは、偽陽性率が低い検査です。ただし、偽陰性は含んでいるかも。
(3)(4) 尤度比にも陽性と陰性がありますので、一応覚えてましょう。分子分母のキャラは同じで覚え易いです。
(7) ROC曲線はタテ軸が感度、ヨコ軸が偽陽性率であり、(尤度比)=(感度)/(偽陽性率)
(8)(尤度比)≧10で有用な検査、5≧(尤度比)で有用でない検査とされます。
除外診断と確定診断についての説明は以下の記事を参考にしてください。
【医療統計】感度・特異度 (定義編)
孤発性アルツハイマー病では(1)家族性アルツハイマー病とは異なり、特定の疾患責任遺伝子は見出されていないため、(2)環境因子と遺伝因子の相関という観点から研究がなされている。その中で、遺伝的危険因子として広く認められているのは、アポリポ蛋白E遺伝子APOEに於けるε4(3)アレルである。(その遺伝子が産生するタンパク質apoEには3つのアイソフォームが存在することが知られている)
APOEε4アレルの陽性率は健常人で約10%、アルツハイマー病の患者で約40%であるということがわかっている。アルツハイマー病の一般発症頻度を3%(有病率)とする。
問1下線部(1)の発症に関して3つの遺伝子
が特定されている。これらにより産生が亢進されるタンパクは何と呼ばれるか?
問2下線部(2)のように様々な因子が関与している形質のことを何と呼ぶか。また、そのような疾患の例を1つ挙げよ。
問3下線部(3)をローマ字表記せよ。
問410000万人を対象にApoEε4アレルを検査に用いてアルツハイマー病を診断した場合、陽性的中率はいくらになるか?(旭川医科大学 改題)
【解答】
問1アミロイドβ
問2多因子形質 例)糖尿病、高血圧、リウマチ、痛風、高脂血症、悪性腫瘍など
環境要因と遺伝的要因とが合わさって発症する疾患の例は沢山有りますので、もし聞かれたら何か書きましょう。
問3allele (これは書けるようにしましょう)
問4与えられている条件から、以下のように表を埋めることができます。
|
アルツハイマー病患者 |
非アルツハイマー病患者 |
合計 |
ApoEε4アレル陽性 |
120 |
970 |
|
ApoEε4アレル陰性 |
|
|
|
合計 |
300(有病率3%から計算) |
9700 |
10000 |
APOEε4アレルの陽性率は健常人で約10%(偽陽性率)なので970、アルツハイマー病の患者で約40%(感度)なので120、が各々表で埋められます。
よって、陽性的中率=120/(120+970)=0.110...→ 11%
補足)ここでは、陽性的中率11%と低く計算されましたが、これはApoEε4アレル陽性の行で120/(120+970)と計算しており、アルツハイマー病患者の数が120と少ないためです。そもそも多因子性疾患であるので、この陽性的中率だけを頼りに診断を下すのではなく、他の検査も合わせて検査をするべきであると考えられます。
A型インフルエンザの迅速診断検査として、鼻腔ぬぐい液から得られたインフルエンザウイルス抗原を(1)法で検出する方法が用いられている。あるインフルエンザ迅速診断キットによるA型インフルエンザウイルス検査と分離培養法による確定検査を同時に行った。
|
分離培養検査陽性 |
分離培養検査陰性 |
合計 |
迅速診断キット陽性 |
50 |
15 |
65 |
迅速診断キット陰性 |
5 |
90 |
95 |
合計 |
55 |
105 |
160 |
問1空欄(1)を埋めろ。
問2A型インフルエンザウイルスは度々、世界的流行を引き起こすが、これはヘマグルチニンやノイラミニダーゼといった抗原を変化させることによるものである。さて、この仕組みをなんというか?
問3迅速診断キットの感度と特異度を求めろ。
問4男児(5歳)がインフルエンザ疑いで来院した。問診によると10歳の兄がおり、1週間前にA型インフルエンザ陽性と診断されているとのこと。また、症状は昨晩から出たとのこと。インフルエンザ迅速診断キットを用いた検査の結果は、陰性であった。あなたが医師であるとして、どのように保護者へ説明をし、対処するか答えよ。(旭川医科大学 改題)
【解答】
問1イムノクロマトグラフィー(法)
問2抗原不連続変異
問3(感度)=50/55=0.9090...=0.91、(特異度)=90/105=0.857...=0.86
問4迅速診断では陰性であるが、症状が有り、A型インフルエンザ陽性の兄を持つことから、偽陰性である可能性がある。また、検査時に迅速キットで検出できるほどウイルス量が存在していなかったことが理由として考えられる。(発症から48時間以内であると考えられ、治療薬として抗インフルエンザ薬を処方する。)
【医療統計】感度・特異度 (定義編)