
この記事では、医学部学士編入試験でしばしば出題される、感度と特異度、そして尤度比周辺の知識についてまとめています。他にも、偽陽性率、偽陰性率、ROC曲線、検査前確率(有病率)、検査後確率(陽性的中率)、陽性的中率(陽性予測値)、陰性的中率(陰性予測値)、検査前オッズ、検査後オッズに関する知識についても整理しています。この分野は知っていなければ白紙で答案を出さざるを得ない分野ですが、しっかりと演習をすれば、この分野を必ず得点源にすることができます。文章の説明だけではイメージがわかりづらいので iPad +手書きの動画を用意しました。是非参考にしてください。
以下の動画で、この記事の内容全てを6分弱で全て理解できます。(無音ですので、どこでも視聴可能です。)
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補足)尤度比には陽性尤度比と陰性尤度比が定義されています。試験で問われるのは基本的には陽性尤度比なので、尤度比と言ったら陽性尤度比のことであることに注意しましょう。ちなみに、陰性尤度比とは、陰性尤度比=(1−感度)/特異度 で定義されており、感度と特異度が大きくなるほど、小さくなる値です。
ここで、以下の式が成り立ちます。
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また、問題編も参考にして頂けると、この分野でほぼ満点を取ることができると思います↓
1)感度と特異度の求め方

- 感度は(検査結果が陽性で、疾患あり)を(疾患ありの総数)で割った値です。
- 特異度は(検査結果が陰性で、疾患なし)を(疾患なしの総数)で割った値です。

2)偽陽性率と偽陰性率
偽陽性率はその言葉通り、意味を考えれば「ほんとは陰性なのに陽性と出ちゃった」なので、2×2表では右上のマスに当たります。 偽陰性率もその言葉通り、意味を考えれば「ほんとは陽性なのに陰性と出ちゃった」なので、2×2表では左下のマスに当たります。 求め方は、感度と特異度のところでもやったように、タテの列で考えることに注意してください。3)感度と特異度、偽陰性率と偽陽性率の関係
上の1)、2)の解説でも出てきましたが、感度 =1− 偽陰性率 (感陰 カンイン) 特異度 =1− 偽陽性率 (特陽 トクヨウ)の式が成立することになります。この式は超重要なので、必ず理解してください。表の意味を理解していれば自分で導出できると思いますが、試験は時間との勝負なので、僕は「感陰、特陽(カンイン、トクヨウ!)」と暗記しています。
4)検査前確率(=有病率)と検査後確率(=陽性的中率)
検査前確率は有病率と等しく、検査後確率は陽性的中率と等しいので注意が必要です。検査前確率=(疾患あり)/(全体) 検査後確率=(検査で陽性で、かつ疾患あり)/(検査で陽性)

5)陽性的中率と陰性的中率
陽性的中率は陽性予測値、陰性的中率は陰性予測値とも言います。 上述しましたが、陽性的中率は検査後確率と等しいので注意してください。
6)尤度比とは
漢字の『尤』は訓読みすると『もっとも』と読みます。つまり尤度比は、『もっともらしさ』を表しており、以下で定義されます。尤度比=感度/偽陽性率 偽陽性率は(1−特異度)これは、『疾患がない人で検査陽性になる人に対する、疾患がある人で検査陽性になる人の比率』言い換えると、『疾患のある人の、検査陽性になり易さ』を表しており、つまりは、 偽陽性率(1− 特異度)に対する、真性陽性率(感度)の比率 のことです。 この尤度比は、感度と特異度が大きくなるほど大きくなり、これは次の項目のROC曲線の接線の傾きを表しています。この尤度比が大きいほど「良い検査」となることになります。

7)ROC曲線について
ROC曲線とは、Receiver Operating Characteristic Curve の略称であり、タテ軸に感度、ヨコ軸に偽陽性率(1− 特異度)をとったグラフのことです。ROC曲線は、タテ軸に感度、ヨコ軸に偽陽性率(1− 特異度)をとったグラフこのグラフで重要なのは、どんな検査でも感度を上げれば、偽陽性(本来、健康な人なのに検査で陽性と判断されてしまう人)が増えてしまうが、検査の中でも感度を上げても偽陽性が増えない検査が「良い検査」であるということです。 すなわち、感度を上げても偽陽性率が低い、グラフの立ち上がりが急激なグラフとなる検査が最も良い検査と言えるわけです。

8)検査前オッズと検査後オッズ、尤度比の関係
検査前オッズ、検査後オッズとは、疾患の罹患しやすさを表しています。(疾患なし)に対する(疾患あり)の比のことであり、『オッズが1である』とは罹患しやすさが等しい検査前オッズ=(疾患あり)/(疾患なし) 検査後オッズ=(検査陽性で疾患あり)/(検査陽性で疾患なし)検査前確率(有病率)や検査後確率(陽性的中率)のように、全体数で割り算をするのではなく、あくまで、(疾患なし)、もしくは、(検査陽性で疾患なし)で割り算をする点で定義が異なることに注意してください。

(検査後オッズ)=(検査前オッズ)×(尤度比) ・・・(✳︎)証明は、尤度比 = (a/a+c)/(b/b+d) = (感度)/(偽陽性率)であることから導き出せます。 補足) この『オッズ』は、ある二つの群におけるオッズの比較、つまり『オッズ比』として用いられます。例えば、ある民族Aと民族Bを調査し、ある疾患に関して民族Aでは100人中60人が罹患したのに対して、民族Bでは100人中20人が罹患したとします。この時、各民族のその疾患に対する罹患オッズは、
(民族A 罹患オッズ) = 60/40、(民族B 罹患オッズ) = 20/80であるから、この疾患に対する、民族Aの罹患のし易さ(オッズ比)は、
(60/40)/(20/80) = 6 > 1となります。 注1)オッズ比が1より大きい場合は、その事象が起こりやすいことを表しています。(仮に、オッズ比が等しい場合は、各民族でのその疾患に対する罹患のし易さが同じだということ) 注2)因みに、(✳︎)の式を変形すると、
(検査後オッズ)/(検査前オッズ) = (尤度比) ・・・(✳︎✳︎)検査前後のオッズ比は、尤度比として表されます。このことは、尤度比の定義である『疾患のある人の、検査陽性になり易さ』を表していることに他なりません。
9)除外診断には感度の高い検査を行い、確定診断には特異度の高い検査を行うことについて
十分に感度が高い検査で、陰性であるならば、疾患である可能性が低く、除外できる(除外診断)感度の定義を思い出して欲しいのですが、感度とは、「疾患のある人で、検査で陽性になる人」つまり『真陽性』を表しています。「十分に感度が高い検査」とは、基本的には「疾患のある人」を検出していますが、当然「疾患のない人」も偽陽性としてわずかながら検出してしまっています。この偽陽性者に関しては、陽性と判断されてはしまいますが、この「十分に感度が高い検査」で「陰性であるならば」、『真陽性ではない』=『疾患が陰性である』つまり除外できることになります。

感度 Sensitivityが高い検査は、真陽性が出やすいであり、これで陰性が出た時は、除外診断 Out できる(偽陽性はわからないけど)
ということでSenout
SensitivityはOutに用いると覚えましょう。 『感度が高い検査』は除外診断に用いられる。十分に特異度が高い検査で、陽性であるならば、疾患でない可能性が低く、確定できる(確定診断)一方で、特異度とは「疾患のない人で、検査で陰性になる人」、つまり『真陰性』を表しています。「十分に特異度が高い検査」とは、基本的には「疾患のない人」を検出していますが、当然「疾患のある人」も偽陰性としてわずかながら検出してしまっています。この偽陰性者に関しては、陰性と判断されてはしまいますが、この「十分に特異度が高い検査」で「陽性であるならば」、『真陰性ではない』=『その疾患が陽性である』つまり確定できることになります。

特異度 Spcifity が高い検査は、真陰性が出やすいであり、これで陽性が出た時は、確定診断 in できる(偽陰性はわからないけど)
ということでSpin
Specifityはinに用いると覚えましょう。 『特異度が高い検査』は確定診断に用いられる。感度が高いだけでは意味がない。特異度も高いことが理想。
感度が高い(99%)とされている検査で、陽性が出ました。この『陽性』には偽陽性の患者も含まれています。 感度とは、分母の数が『疾患あり』の人数である為、『感度が高い』は『偽陰性が低い』ことと同値です。 その為、『感度が高い』からと言って検査で陽性と出た人の中には、どれだけ『偽陽性』が含まれているかわかりません。 そこで同時に、仮にこの検査が『特異度が高い』ものであれば、陰性患者のうち『真陰性』が出る確率が高い為、『偽陽性』が低く抑えられます。つまり、検査は感度が高いだけでも、特異度が高いだけでもダメで、理想的には感度が高く、特異度が高い検査が理想
となります。くどいですかね。。