オートファジー
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2016年に東京工業大の大隅良典先生は、細胞自身が不要なたんぱく質を分解する仕組み『オートファジー』を分子レベルで解明し、ノーベル医学生理学賞を受賞しました。このこともあり、オートファジーに関する知識は医学部学士編入試験、生命科学では、2017年から出題が増えていくと考えられますので、しっかりと押さえておきたいと思います。


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問題1 穴埋め対策

 生命活動維持の為には、一旦合成されたタンパクを適切に分解処理し、構成成分をリサイクルしてゆく必要がある。その細胞のリサイクル機構の主役を担うのが、細胞質における選択的タンパク質分解機構である ( 1 ) 系である。これに対して、非選択的タンパク質分解機構が ( 2 ) である。この機構は大隅良典(東京工業大)らによって ( 3 ) を用いた研究によって明らかにされた。( 2 ) に用いられる加水分解酵素は通常 ( 4 ) 内に格納されており、必要に応じて不要タンパクを"非選択的に"かつ"まとめて"リソソームへ送るため、 ( 5 ) 分解とも言われる。その過程は以下の通り。まず、タンパク質やミトコンドリアなどの細胞質成分が ( 6 ) によって囲まれ ( 7 ) が形成される。次にこの ( 6 )と分解酵素を含んだ ( 4 )もしくはエンドソームとが融合することで、( 8 ) を形成し内容物が分解される。このオートファジー機構は日常的に細胞内品質管理を行うための『基底レベルのオートファジー』と、飢餓状態に対応するための『誘導されるオートファジー』の2種類が存在している。まず、『基底レベルのオートファジー』に関して、水島(東京大) らの研究によると、全身でオートファジーが不能となるAtg5 KOマウス新生児を用い、ユビキチン化タンパク質の蓄積(異常タンパク質の指標)を調べた結果、神経細胞と肝細胞で著しい蓄積を認め、神経特異的Atg5 KOマウス新生児においては生後1ヶ月で歩行障害や異常反射などの神経変性疾患様症状を呈し、脳のほぼ全ての領域の細胞質でユビキチン陽性タンパクの蓄積が認められた。従来、細胞内品質管理は ( 1 ) 系によって行われると考えられていたが、オートファジーによる協調的作用も重要であることが明らかにされた。神経変性疾患として、ヒトにおいては ( 8 )( 9 )、 ( 10 ) など細胞内に異常タンパクの蓄積を認める疾患もあり、オートファジーはこれらのタンパク変性疾患を防いでいるとも考えられる。実際、ヒトの神経疾患の ( 11 ) 病では、オートファジー遺伝子の変異が見つかっている。一方で、オートファジーは栄養飢餓状態において顕著に発動することが水島らの研究(Mizushima, N.,Nature, 2004) によって明らかにされた。マウス胎児は胎盤を通じて母体から栄養を補充されるが、出生直後には一時的に栄養飢餓状態に晒される。新生児は母乳による栄養補給が実現するまで、炭水化物や脂質の貯蓄分だけではなく、自己タンパク質分解によるアミノ酸産生によって栄養補充を行っていることが明らかにされた。この研究は、哺乳類で初めてオートファジーの意義を明らかにした研究として認知されている。また、受精卵においては、受精直後のマウス胚でオートファジーが活発になることや、受精卵においてオートファジーが機能しないと、4〜8細胞期胚で発生が停止し、致死となることが明らかになった。(Mizushima, N.,Science, 2008) (創作問題)

【解答】

1.ユビキチン・プロテアソーム(系)、2.オートファジー、3.出芽酵母、4.リソソーム、5.バルク、6.隔離膜、7.オートファゴソーム、8.オートリソソーム、9.10.11.ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病(順不同)、12.SENDA(病)

 

オートファジーで問われる内容は、上記の内容と以下の絵を覚えるだけでほぼ満点が取れます。

問題2 記述対策1

 オートファジーの仕組みを150字以内で説明しなさい。(鹿児島大 2017)

【解答】

細胞質内の異常タンパク、細胞質の一部が隔離膜で覆われオートファゴソームを形成する。そこへ加水分解酵素を含むリソソームやエンドソームが融合し、オートリソソームを形成し内部のタンパクを分解する。異常タンパク除去による細胞内品質管理、そして飢餓状態における自己タンパク分解によるアミノ酸補充を行っている。(149字)

【ポイント】

●異常タンパクが隔離膜で囲まれてオートファゴソームになる。

●リソソームやエンドソームが融合してオートリソソーム(直径約 1μm)になる。

●異常タンパク除去による細胞内品質管理、飢餓状態における自己タンパク分解によるアミノ酸補充を行っている。


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問題3 記述対策2

 オートファジー能力を欠如するAtg5 KOマウスを作製したところ、このマウスは出生直後に致死となる。その理由を述べよ。(名古屋大 類題)

【解答】

マウス胎児は胎盤を通じて母体から栄養を補充されるが、出生直後には一時的に栄養飢餓状態に晒される。新生児は母乳による栄養補給が実現するまで、炭水化物や脂質の貯蓄分だけではなく、自己タンパク質分解によるアミノ酸産生によって栄養補充を行っているから。

【ポイント】

出生後には胎盤からの栄養補給が無くなるので、オートファジーの自己タンパク分解によってアミノ酸を得ている。


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問題4 記述対策3

 哺乳動物におけるオートファジーの生理的意義について知るところを4つ述べよ。(創作問題)

【解答】

①異常タンパクの蓄積を防ぐ細胞内浄化作用(それによる神経変性抑制作用)、②栄養飢餓状態における自己タンパク分解によるアミノ酸補充作用、③胚の初期発生における新規タンパク合成作用、④腫瘍発生抑制作用、⑤抗原提示 などから4つ答える。

【ポイント】

異常タンパクの蓄積を防ぐ細胞内浄化作用(それによる神経変性抑制作用):これは定常状態においても作用している。神経細胞におけるコンディショナルKOマウスでは、神経変性様症状を呈することがわかっている。ヒトでは神経変性疾患の一つであるSENDA病においてWIPI4遺伝子の変異が認められる。

栄養飢餓状態における自己タンパク分解によるアミノ酸補充作用:これは飢餓状態における作用。全身でオートファジー能を欠失したAtg5 KOマウスでは、出生直後、飢餓状態により致死となる。

胚の初期発生における新規タンパク合成作用:受精直後のマウス胚でオートファジーが活発になることや、受精卵においてオートファジーが機能しないと4〜8細胞期胚で発生が停止し、致死となることが明らかとなっている。

腫瘍発生抑制作用Atg5モザイク欠損マウスの解析で明らかになったもので、肝臓においてのみ多発性腫瘍が認められた。これは、オートファジー能不良ミトコンドリアや毒性タンパク質の蓄積によるものと考えられている。

参考)

URL:http://square.umin.ac.jp/molbiol/research/proffessional.html

抗原提示作用:オートファジーは自然免疫と獲得免疫に関わっていることがわかっている。自然免疫は,細胞内に侵入した溶血性 A 群連鎖球菌やヘルペスウイ ルス等の排除にオートファジーが関係していることが分かっている。獲得免疫においては、ヒト樹状細胞の MHC class IIによる抗原提示にもオートファ ジー関連因子が必要であることが分かっている。

参考)

URL:http://square.umin.ac.jp/molbiol/research/proffessional.html


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問題5 記述対策4

 酵母と動物細胞におけるオートファジーの意義について生育環境の違いに観点を置き、250字以内で答えなさい。(鹿児島大 2017)

【解答】

単細胞生物、多細胞生物に共通することは、共に栄養飢餓状態においてオートファジーは活性化し、自己タンパク分解作用によってアミノ酸補充を行なっていること、また、異常タンパクの細胞内蓄積を防ぐという意味において重要な意義を持つ。しかし、単細胞生物に比べ、多様に変化してゆく生育環境に対応してゆくために、多細胞生物においては、更に胚の発生や分化の際における新規タンパクの合成に必要なアミノ酸を供給するということに加え、脊椎動物においては抗原提示にも関与しているという意味等において重要な意義を持つ。(245字)

【ポイント】

多細胞生物は単細胞生物に比べて、多様な生育環境に対応するために、オートファジーの意義が増す、という方向で書けばいいのではないかと思う。


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問題6 記述対策5

 細胞内にエンドサイトーシスによって侵入してきた病原体を選択的にオートファゴソームによって捕獲するということが知られている。これは、侵入してきた病原体を選択的に狙い撃ちしてオートファゴソームが形成されている可能性以外に、どのような可能性が考えられるか。(創作問題)

【解答】

細胞内に侵入してきた病原体を包むエンドソーム膜が破れ、その損傷したエンドソーム膜を標的にしてオートファゴソームが形成されるという可能性が考えられる。

【ポイント】

●実際、このことはすでに吉森 保先生(大阪大)の実験で示されており、直径数マイクロメートルのポリスチレン製人工ビーズにトランスフェクション試薬を振りかけて細胞に取り込ませたところ、ビーズを含むエンドソーム膜が破れ、オートファジーのトリガーとなるAtgタンパク質が損傷したエンドソーム膜に集合することが明らかになった。

参考URL:Originally published in Journal of Cell Biology, 203, 115-28, 2013, doi: 10.1083/jcb.201304188


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