生体物質の前駆体としてのアミノ酸利用
スポンサーリンク

アミノ酸は多くの生命物質の前駆体として利用されているため、各アミノ酸を思い浮かべたら、同時にそこから派生する生体物質を想起できるようにしておく必要があります。ここではチロシンヒスチジントリプトファングリシンメチオニングルタミン酸についてまとめてみました。各アミノ酸にスポットを当ててみると、様々な代謝につながってゆくため、学ぶことが多いです。


スポンサーリンク

アミノ酸の利用

【穴埋め問題】
チロシンTyr(Y)は酵素チロシンヒドロキシラーゼによって レボドパ(Lドパ)に変換される。そして脱炭酸されると ( 1 ) になる。この ( 1 ) の脳内での減少はパーキンソン病と関係しており、血液脳関門を通過するレボドパと、通過できない ( 1 ) の違いがよく試験で狙われる。そして ( 1 ) が水酸化されてノルアドレナリンNAを生じ、さらに ( 2 ) 化されることによって、アドレナリンADが生じる。また、Tyrは甲状腺ホルモンであるサイロキシンT4(血中に出てトリヨードサイロキシンT3へ変換される)の原料でもある。因みに血中濃度はT4>T3である。また、紫外線吸収に寄与する ( 3 ) 色素の原材料でもある。また、シグナル伝達においてはTyrキナーゼ連結型受容体におけるリン酸化部位にもなっており、カスケード反応の起点にもなっている。
 
ヒスチジンHis(H)はビタミンB6を補酵素として脱炭酸反応により ( 4 ) が生じる。( 4 )は肥満細胞、好塩基球により産生される。( 4 ) 受容体は4種類のサブタイプが存在するが、全てGタンパク質連結型受容体である。H1受容体はGqであり、気管支 ( 5 )、血管 ( 6 )、血管透過性 ( 7 )につながり、Ⅰ型アレルギーと関係している。H2受容体はGsであり、胃酸分泌亢進に関与しており、胃潰瘍と関係している。

スポンサーリンク

トリプトファンTrp(W)は側鎖に ( 8 ) 環を持ち、水酸化されたのち脱炭酸され生じる ( 9 ) や、松果体から内分泌される ( 10 ) といったホルモンだけでなく、ナイアシンの体内活性物質である ( 11 ) の前駆体でもある。因みに、Trpのコドンは一種類でありUGG(うぐぐ、、、)である。コドンが一種類しかないのはこのTrpとMetの2種類である。
 
グリシンGly(G)は生体内で多くの前駆体として用いられる。例えば、-(Gly)-(X)-(Y)- が繰り返されて、( 8 ) の一次構造となっている。また、GlyはサクシニルCoAと反応し ( 8 ) 酸を経て、反応を繰り返して ( 9 ) が生成する。( 9 ) は活性中心にFe2+をもち酸素の運搬を担っている。また、Glyはアミノ酸である ( 10 ) と反応して骨格筋におけるATPの供給源となる ( 11 ) が合成される。因みにこの ( 11 ) はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの略称である。また、Glyは神経伝達物質として抑制性アミノ酸としても働き、他にはGABAがある。

スポンサーリンク

メチオニンMet(M)は ( 12 ) と反応して、メチル基供与体である ( 13 ) を生じる。メチル基を渡した後は、S-アデノシルホモシステインとなる。Metは開始コドンAUGである。
 
グルタミン酸Glu(E)興奮性の神経伝達物質であるが、抑制性の神経伝達物質である ( 15 ) (γアミノ酪酸)の原材料となる。(Gamma-Amino Butyric Acid ) の略称であり、Butyric Acidビューティリックアシッドとは酪酸の意。( 15 )は血液脳関門を通過しない物質であり、体外からチョコレートとして(?)GABAを摂取したとしても、それが神経伝達物質としてそのまま用いられることはないので注意。受容体であるGABAA受容体 は、( 16 ) 型受容体であり、リガンドが結合するとこの受容体は ( 17 ) イオンを選択的に透過させ、神経細胞に ( 18 ) が生じることで細胞の興奮を抑制する。

(創作問題)

【答え】
1.ドパミン、2.メチル(化)、3.メラニン、4.ヒスタミン、5.(気管支)収縮、6.(血管) 拡張、7.(血管透過性)亢進、8.インドール(環)、9.セロトニン、10.メラトニン、11.NAD、12.ATP、13.S-アデノシルメチオニン、14.GABA、15.アスパラギン酸、16.イオンチャネル(型受容体)、17.クロライド(イオン)、18.過分極

スポンサーリンク


チロシンTyr(Y)

チロシンはチロシンヒドロキシラーゼによって水酸化されたのち、Lドーパになり、脱炭酸されるとドパミンになる。そしてさらに水酸化されるとノルアドレナリンになる。さらにノルアドレナリンメチル化されることでアドレナリンとなる。この流れは超重要。

チロシン → Lドーパ → ドパミン → ノルアドレナリン → アドレナリン

  これらの構造式は描けるようにしておけば、高得点に繋がるハズ。

補足:パーキンソン病では脳内のドパミン量が不足しているが、ドパミンを投与しても効果がないことは有名である。ドパミンではなく前駆体のLドーパを投与する。ドパミンは血液脳関門を通過しないがLドーパは通過でき、脳内の脱炭酸酵素によってドパミンに変換されるからである。有名問題です。

血液脳関門に関してはこちら↓

[blogcard url=" http://igakubugakushi.com/bbb "]


スポンサーリンク

余談ですが、2017年 琉球大学医学部学士編入試験において、アドレナリンの構造式を描かせる問題が出ました。皆さんできたんでしょうか。自分はメチル基の位置をミスして得点できませんでした。もちろん結果は一次落。復習(讐?)のために描いておきます。

また、Tyrは甲状腺ホルモンであるサイロキシンT4(血中に出てトリヨードサイロキシンT3へ変換される)の原料でもある。因みに血中濃度はT4>T3である。また、紫外線吸収に寄与する メラニン色素の原材料でもあることも知っておきたい。

 

甲状腺の組織解剖学についてはこちら↓

[blogcard url="http://igakubugakushi.com/thyroidgland"]

 


スポンサーリンク

また、シグナル伝達においてはTyrキナーゼ連結型受容体におけるリン酸化部位にもなっており、カスケード反応の起点にもなっている。

チロシンキナーゼ連結型受容体の一例 インスリン受容体 についてはこちら↓

[blogcard url="http://igakubugakushi.com/insulin"]

 

ヒスチジンHis(H)

ヒスチジンはの脱炭酸によってヒスタミンが生成する。生じたヒスタミンはⅠ型アレルギーとも関係しており試験頻出である。 

ヒスタミンてこんな構造式してたんですね。 


スポンサーリンク

また、ヒスタミン受容体の働きについてまとめておきましょう。

ヒスタミン受容体はH1からH4まであって、全てGタンパク質連結型受容体である。

試験的に重要なのはH1受容体H2受容体であって、

H1受容体は、気管支収縮、血管拡張、血管透過性亢進の3つが重要!

H2受容体は、胃酸分泌亢進を覚えておく。

 

Ⅰ型アレルギーについてはこちら↓

[blogcard url="http://igakubugakushi.com/allergytype1"]


スポンサーリンク

トリプトファンTrp(W)

トリプトファンは側鎖にインドール環を持つ芳香族アミノ酸である。(芳香族アミノ酸はFWYの3つであることも忘れないようにする)

また、概日リズムと関係のあるセロトニンメラトニンそしてナイアシンの体内活性物質であるNADの前駆体でもある。

この Trp → セロトニン、メラトニン、NADはいつも忘れてしまうので、暗記ゴロ。

『トライセラトップス等!』と覚える。『トラ(Trp)イセラ(セロトニン)ト(メラトニン)ップス等(NAD)!』

暗記ゴロはなんでもいいのです。

 

ダメ押しでトリプトファン→セロトニンの構造式を書いておきます。

 


スポンサーリンク


グリシンGly(G)

グリシンは生体内で様々な生体物質前駆体として用いられている。

  1. コラーゲン:-(Gly)-(X)-(Y)-を繰り返し配列とした一次構造を繰り返す。XとYはアミノ酸。
  2. ポルフィリン:GlyとスクシニルCoAからδアミノブレリン酸を経て、反応を繰り返しヘムを合成する。(ヘムはポルフィリンとFe2+からなる錯体)
  3. クレアチン:GlyとArgからクレアチンリン酸として合成される。
  4. グルタチオン:Glu、Cys、Glyのトリペプチドで、抗酸化作用と細胞解毒作用を有する。
  5. プリン体:各プリン体合成の原料となる。


スポンサーリンク

メチオニンMet(M)

メチオニンは側鎖の端っこがメチル基であることが超重要で、ATPと反応してメチル基供与体のS-アデノシルメチオニンになるのでした!

メチオニンの利用についてはこちら↓

[blogcard url="http://igakubugakushi.com/aminoacid-metabolism"]

 

 


スポンサーリンク

 


【 記述対策 】

【問題1】
パーキンソン病治療薬として、ドパミンの投与は意味をなさない理由を説明せよ。
 
【答え】
ドパミンは血液脳関門を通過できないため、その前駆物質であるレボドパ(Lドーパ)を用いる。レボドパは血液脳関門通過後、脱炭酸酵素によりドパミンへ変換される。

【ポイント】 血液脳関門通過はレボドパはOK、ドパミンは×!

 

 

【問題2】
レボドパの脳内移行率を高めるために、どのようなことを行えば良いか考えて答えよ。(創作問題)
 
【答え】
レボドパの脱炭酸酵素は全身に存在するため、血液脳関門を通過せず、かつ抹消において選択的に作用する脱炭酸酵素阻害薬を用いれば良い。

【ポイント】 これは臨床の現場で用いられている方法であり、抹消における脱炭酸酵素阻害薬を用いて、血液脳関門を通過する前にレボドパが代謝されてしまうのを防ぐことによって、レボドパの脳内移行率を高めることができる。 参考URL:http://kusuri-jouhou.com/pharmacology/parkinson.html


スポンサーリンク

おすすめの記事